創業融資と普通の融資の「違い」と「対策」

創業融資と普通の融資の違い 一般事業者向けコンテンツ

皆さんは、創業融資と普通の融資の違いをご存知でしょうか?

一般的には同じものと考えられがちですが、この2つはその対象だけでなく、条件や利用できる期間など様々な点で大きく違っています。

ここではその違いから攻略の対策についてご説明します。

創業融資と普通融資の違い

申し込みができる対象について

創業融資と普通の融資とでは、申し込みができる対象が異なります。

創業融資
創業前または創業後一定期間までの方が対象となります。

例えば、日本政策金融公庫の新創業融資制度では、「開業後2期を経過するまでの方」が対象ですが、東京都制度融資では「創業後5年」となっており、利用する融資の制度によりこの期間は異なります。
※ 参考:「日本政策金融公庫 vs 制度融資」要件・限度額・金利他の全比較

普通融資
原則として、創業後の方であればだれでも利用することができます。

以上のように、創業融資と普通融資とでは、異なる部分もありますが、重なり合う部分もあるため、創業期の方については、いずれかを選択して利用できるケースもあります。

利用できる融資の種類について

創業融資のうち無担保・無保証人タイプの融資としては、以下の2つだけが対象となります。

〇 日本政策金融公庫の「新創業融資」(限度額3,000万円)
〇 信用保証協会の「制度融資」(東京都の場合限度額3,500万円)
   ※ 限度額は主催する自治体により変わります。

これに対して、普通融資では、多くの融資のバリエーションがあり、利用できる種類はその方の職種やその他の条件によって異なります。

自己資金について

創業融資の場合、日本政策金融公庫の「新創業融資」では「創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要」という条件(「自己資金要件」)があり、これを満たさなければ融資を受けることはできません。
※ ただし、創業後1期を過ぎた方を除く
また、東京都制度融資では、具体的な額や割合についての指定はありませんが、やはりある程度の自己資金が必要となります。
※ 参考:80%以上の人が知らない!新創業融資制度の「自己資金」の疑問をすべて解説!

これに対して普通融資では、自己資金は必要とはされません。
しかし、普通融資で、審査の際に重要な指標となるものの一つに「流動比率」(資産の中で、現金や預金といった流動資産が占める割合)というものがあり、これが低い場合には融資のお断りの原因となることもあります。

創業融資と普通融資の特徴

それぞれの融資の特徴をまとめると以下のようになります。

創業融資の特徴

・実質的に利用できるのは、日本政策金融公庫と制度融資の2種類が基本。
・創業の方(通常、開業後2~5年程度)のみを対象とした特殊な融資である。

・融資条件が緩和されていたり、金利や担保の有無などについて優遇されていることが多い。
・審査は、過去の経営実績や決算状況によらず、一定の元手(自己資金)や今後の事業に対する見通し(事業計画書)を中心に行われる。

普通融資の特徴

・融資のバリエーションが多く、目的に沿ったプランが用意されている。
・融資の審査は、過去の実績や経営状況を中心として、判断される。
・自己資金の要件などがない。
・創業融資に比べて、融資を受けられる金額が大きい。
・特別な制度や信用保証協会を利用しなければ、融資は有担保または有保証が原則。

それぞれの融資審査のポイント    

創業融資の審査ポイント

創業融資では、日本政策金融公庫と制度融資とでは、次のような審査傾向の違いがあります。

日本政策金融公庫】
◆  通帳の中身による実態的なお金の流れを重視されやすい。

◆  自己資本を作るまでの経緯とその中身が重視されやすい。

【制度融資(信用保証協会)】
◆ 事業
計画のバランスや収支計画の内容が重視されやすい。
◆ 融資の窓口となる金融機関の意向が結果に反映されることがある。

しかし、いずれも普通融資の場合よりは、本人の熱意や将来性といった部分が評価されやすい審査となっています。
また、赤字であっても、将来性や計画の中身次第では融資が出ることも多いという点では、プロパー融資(民間金融機関が独自の判断で行う融資)よりも借りやすいといえます。
※ 参照:これができれば融資は出る!赤字の場合の融資への対処法

普通融資の審査のポイント

一方、普通融資の場合は、ある程度事業の実績のある方が対象となるため、決算書の内容や実績が審査の中心となります。

普通融資の審査では、自己資本比率、流動資産比率、固定資産比率となどといった多くの財務分析をした結果に基づいて融資の判断を行っています。そのため、融資先企業の業績が悪くなると
 〇 業績が悪くなる → 〇 決算書内容も悪くなる → 〇 銀行格付けが低下 → 〇 融資が出ない
ということになります。

また、決算書にしてもその内容をそのまま判断しているわけでなく、その数字を実態ベースに置き換えたうえで審査を行っています。

たとえば決算書では、在庫の価値が100とされていても、ヒアリングや独自の調査によりその内容が70しかないと判断すれば、これを30マイナスして評価します。
また、簿価500とされている土地があったとても、その時点での時価が350しかないのであれば、やはり同じように減額して考えます。

このような評価の仕方を「決算書の実体的修正」といいます。

したがって、金融機関では、単に表面的な決算書の数字がよいからと言って融資をするのではなく、このような修正をした内容を基準に融資の判断をしています。
※ 参照:金融機関はここを見て貸している!

 

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プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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