これから創業される方の中には「法人と個人事業主、どちらで開業しようか?」とお悩みになっている方も多いと思います。
確かに、法人と個人では融資を受ける主体が異なるだけでなく、その後にかかる費用や税金などにも大きな違いが生じます。
しかし、もし、あなたが創業融資を受けるのなら、絶対、法人化することをおすすめします。
この記事では、法人・個人事業のメリット・デメリットの他、創業融資で法人だけが受けられる大きなメリットについてご説明いたします。
法人化のメリット・デメリット
一般的に法人を設立、または個人事業主が法人化した場合には、次のようなメリットやデメリットがあります。
● 社会的信用が大きくなる。(取引口座の開設など)
● 優良な人材が確保しやすくなる。
● 決算期を自由に選択できる。
● 倒産した時に出資した範囲のみで責任を負う。
(但し、代表者が連帯保証人となっている場合には、法人と同じ責任を負います)
● 税金面に有利な場合がある。
(「赤字を翌期以降9年間繰り越せる。個人は3年分」、「自宅の一部を事務所として利用
する場合に、一部を経費にできる」など)
● 会社と個人の財産を明確に分けることができる。
● 法人の設立に費用と時間がかかる。
(株式会社の設立-15万円、合同会社の設立-6万円の免許税がかかる)
● 赤字の場合でも最低の税金がかかる。(法人住民税の均等割-年間7万円程度)
● 記帳や決算書の作成を専門家に頼まなければならない。
● 従業員の数に関係なく、各種社会保険への加入義務がある。
● 決算以外にも、法的な各種の手続きが必要。(役員変更や、社会保険の届出など)
このうち、起業したばかりの人にとって特に負担が大きいのが「会社の設立費用」と「税理士への支払い」、それと「保険料の支払い」です。
なお、会社の設立費用は自己資金として認めてもらえないことに注意が必要です。
また、法人は社会保険料や厚生年金に強制的に加入しなければなりませんが、社員負担分のうちの約半分については会社がこれを支払わなければなりません。
個人事業のメリット・デメリット
● 事業目的に縛られずに自由に事業をすることができる。
● 売り上げが大きくない場合には経費がかかりにくい。
● 廃業や事業の変更が簡単にできる。
● 記帳や決算の手続きが容易。
● 規模等によっては従業員の健康保険や年金の負担がない。
(適用業種16種は従業員5名未満なら未加入が可能)
● 法人と比べて社会的な信用力が低い。
● 優秀な人材が集まりにくい。
● 決算期は固定で、変更できない。
● 事業に失敗したときには無限責任を負う。
● 税金面で法人ほど優遇されていない。
法人の場合とほぼ逆になりますが、一般的には年商で700~800万円以上の売り上げがないと、法人化のメリットはあまりないとされていますので、小さな商売にはこちらの方が向いています。
なお、法人の場合には定款に記載した事業しかできませんが(事業目的の追加には定款変更登記が必要)、個人事業ではそのような制約はなく、どのようなものでも行うことができます。
それでも法人化をおすすめする2つの大きな理由
完全な無担保・無保証の融資が利用できる
以上のように、法人と個人事業とでは、それぞれメリットとデメリットがあります。
それでも、あえて法人化をおすすめする理由の一つが「日本政策金融公庫の「新創業融資制度を利用する場合には、法人は代表者が連帯保証人にならなくともよい」という特典です。
上記は、日本政策金融公庫の新創業融資制度の案内の抜粋ですが、下線の部分をご覧ください。
法人の代表者には、原則として、責任が及ばないことが明記されています。
通常、無担保・無保証というのは、「不動産の担保や第三者の保証人を立てなくてよい」ということを意味します。なので、法人が無担保・無保証の融資を受ける場合でも、その代表者が連帯保証人とさせられます。
たとえば、法人が信用保証協会の保証付融資や制度融資を利用する場合には、無担保・無保証となっていても、かならずその代表者が連帯保証人とさせられるわけです。
しかし、新創業融資制度では、法人が申し込んだ場合でも、その代表者が連帯保証人にならなくても済みます。その場合には、代表者を連帯保証人とした場合よりも金利が0.1%高くなりますが、このような「完全無担保・無保証制度」の制度は、唯一のものとなります。
したがって、新創業融資制度を利用するのであれば、審査での有利・不利ということではなく、万が一の時のリスクが回避できるという点で、法人で申し込んだ方がよいということになります。
なお、融資のために法人化をするのであれば、会社の設立の仕方にもいくつか注意しなければならない点がありますが、こちらについては「融資の出やすい会社を作る!「正しい法人設立手続き」とは?」の記事を参照してください。
事業の経歴や許認可を継続できる
個人事業から法人にした場合には、それまでの事業の経歴や取得していた許認可が切れてしまいます。
普通、金融機関では融資をするときその企業の過去の実績を見るために3期分の決算書を確認します。しかし、法人成りをした場合には個人事業と法人では決算書は別物となるため、個人事業の時の決算がよかったとしても、それはそのまま法人の評価とはなりません。
このようなとき、個人事業の時の決算は多少は参考にされますが、基本的には「法人になってからの成績がどうか?」いう観点で審査がされますので、非常にもったいないこととなります。
また、許認可を必要とする事業の場合には、個人事業の許認可は法人には引き継がれないため、法人になったときに再取得する必要があります。
そのため、個人事業時代の番号や回数はリセットされてしまうことになります。
これは、特に免許の番号や更新回数がモノをいう業種(例えば、建設業や不動産業など)では、大きな信用の低下となるため、その後の営業活動にも大きな影響を及ぼします。
したがって、このような許認可が重要となる業種の事業では、はじめから法人化しておけば、このようなリスクの回避につながります。
法人の設立手続きの費用の設立によるコストの違い
法人を設立する場合、どのような会社を作るかによりコストにも大きな差が出ます。
株式会社を設立した場合と合同会社を設立した場合とで、コストにどれだけの差が出るかについては以下の通りです。(専門家の報酬、消費税は含みません)
株式会社 | 合同会社 | |
定款認証の公証人手数料 | 50,000円 | な し |
定款印紙税 ※1 | 40,000円 | 40,000円 |
登録免許税 | 150,000円 | 60,000円 |
その他 ※2 | 20,000円 | 20,000円 |
計 | 260,000円 | 120,000 |
※1 電子定款の場合には不要。
※2 印鑑代1万円、諸雑費1万円として算定。
この金額は、自分で手続きをした場合のものであって、専門家に依頼した場合にはあと7~10万円程度のコストがかかります。
なお、法人を設立する場合には、内部の構成(本店、目的、役員など)の仕方によっては、融資に不利になったり、変更手続きをしなければならないこともあります。
したがって、融資を前提とした会社設立手続きをする場合には、登記手続きだけでなく、この点についても理解している専門家に頼まないと、思わぬ失敗のもととなります。
参 照 融資の出やすい会社を作る!「正しい設立手続き」とは?
なお、会社の設立では、「融資向けの設立手続きが必要」ということの他に、「資本金=自己資金が少ないと借りられる額が大きくならない」などの問題がありますが、この点については公庫融資だけでなく、制度融資(信用保証協会付融資)をあわせて利用することで解決できます。
こちらについては、こちらの記事をご参照ください。
参 考 日本政策金融公庫 融資の成功率と獲得額を上げるには?
まとめ
以上のように、個人事業と法人を比較した場合、結局のところ「どっちがトクなのか?」は、「その人がどこにメリットを感じるか?」によることとなります。
しかし、もし、新創業融資制度を利用する予定であったり、許認可の必要な事業をするのであれば、はじめから法人での開業を強くお勧めします。なお、その際には、法人の設立の仕方により融資が出やすくなったり、難しくなってしまうこともあることも考えておく必要があります。
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