創業をお考えの方ならば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」の利用に一定の「自己資金」が必要になる、ということはご存知だと思います。
でも、そもそも、「自己資金」とはいったい何なのでしょうか?
それに自己資金がないと融資は受けられないのでしょうか?
ここでは、日本政策金融公庫の担当者からヒアリングした意見もご紹介しながら、「自己資金とは何か?」、「自己資金がなくても借りられるケース」など、自己資金に関する情報をご紹介します。
自己資金とは何だ?
自己資金に関する2つの条件
日本政策金融公庫の「新創業融資」とは、
◆ 事業開始後2期を超えていない方
のいずれかに該当する方が利用できる融資制度です。
しかし、この融資を申込む場合には、これとは別に
◆ 事業開始後まだ1期目の税務申告をしていない方
のいずれかに該当する場合には
を所有していることが必要となります。
これを「自己資金の要件」といいます。
でもなぜ、ここで確定申告がその基準になっているのでしょうか?
それは、1回でも確定申告をしている方については、
「決算書でその経営内容を判断できる」
ためです。
そのため、このような実績のない方には、一定の自己資金が必要とされているわけです。
自己資金が足りないと・・・。日本政策金融公庫の考え方はこう!
では、この自己資金が足りない場合にはどうなるのでしょうか?
当事務所では、直接、この点について日本政策金融公庫に確認してみました。
その時の担当者からの回答は
そのため、自己資金が不要となる特例などに該当しない場合には、申込みをしても融資はでません。
という厳しいものでした。
つまり、よくネットにある「自己資金がなくとも融資が受けられる」というのは、原則的にはありえないということになります。
自己資金がなくとも融資を受けられる7つの方法
では、「自己資金がなければ絶対、新創業融資は出ないのか?」
といえば、そういうわけではありません。
次のいずれかに該当する場合には、自己資金がなくとも新創業融資制度を申し込むことができます。
なお、これまで日本政策金融公庫では、新創業融資制度で自己資金が不要となる例外のケースを3つだけ示していましたが、最近になってこの例外を7つまで増やしました。
とはいえ、これらについても、なかなか表面的な部分だけではわかりにくいこともあるため、これらの要件の内容や手適用されるケースについても、直接公庫に確認してみましたのであわせてご参照ください。
勤務先の企業と同じ業種の事業で開業する方
現在、お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で
「現在の企業に継続して6年以上お勤めの方」
または
「現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方」
のいずれかに該当する方は、自己資金なしで融資を受けることができます。
なお、前者の条件では、「同じ業種に継続して6年」勤務している必要がありますが、後者の条件による場合には、「同じ業種で6年」の勤務経験があればよいこととなります。
とはいえ、同じ飲食店という業種であっても、居酒屋と蕎麦屋のような過去に共通性がない業種の場合には、この例外に当たらないとされる可能性が高いでしょう。
大学等で修得した技能にもとづいて開業する方
「大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方」は、自己資金なしで融資を受けることができます。
この場合には、「大学等で技能等を修得」→「その技能と関連した職業に継続して2年以上就職」→「その就職先の職種と関連した事業の開始」という流れを踏んで開業される方が対象となります。
なお、「前職と密接に関連した事業」としては、同じ職種で開業する場合の他、例えば科学メーカーに就職していた人が、その経験を活かして新商品の開発をするなどのケースが考えられます。
認定特定創業支援等事業を受けて開業する方
「産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」は、自己資金なしで融資を受けることができます。
「認定特定創業支援事業」とは、産業競争力強化法にもとづいて認定された区市町村が創業に対して行う支援事業をいいます。たとえば、市区町村で行っている創業セミナーなどがこれにあたり、この受講を終了した方に対しては「認定特定創業支援事業による支援を受けたことの証明書 」が交付されます。
ただし、市区町村によっては、この事業の認定を受けていない場合もあるため、まずは開業される市区町村がこの事業についての認定を受けているかどうかを確認してください。
協調融資を受けて事業を始める方
「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」は、自己資金なしで融資を受けることができます。
協調融資とは、1件の申請について、複数の金融機関が共同で行う融資のことをいいます。
具体的には「民間金融機関(銀行・地銀・信金等)のプロパー融資+公庫融資」または「民間金融機関を利用した制度融資+公庫融資」といったケースで融資を受ける場合がこれに該当します。
なお、この場合の公庫の基本的な進め方としては、
・ まず、両方に対して融資の申込みをしてもらう。
・ 金融機関からの融資が出たことを確認できる資料を提出してもらう。
・ その確認をした上で、自分の融資を実行する。
という流れとなるとのことです。
技術・ノウハウ等に新規性が見られる方
「技術・ノウハウ等に新規性が見られる方」は、自己資金なしで融資を受けることができます。
しかし、新規性があるという点については日本政策金融公庫の判断によるため、これを素直に認めてもらうのが難しい場合もあります。
したがって、自分の事業に新規性があると思われる方は、あらかじめ経営革新計画などの公の認定を取得した上で申し込まれる方がスムーズに申し込みができ、審査にも有利となります。
ただし、経営革新計画等の認定があればそれだけで審査が通るということではなく、あくまでも新規性の判断をする上での材料であり、審査は別に行われるということに注意してください。
新商品等の研究・開発のため、一定の期間が必要となる方
「新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売を実施するため、商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要し、かつ3事業年度以内に収支の黒字化が見込める方」は、自己資金なしで融資を受けることができます。
この例外の要件としては
・新商品・新役務の事業化に向けた研究・開発、試作販売の実施であること。
・商品の生産や役務の提供に6ヵ月以上を要すること、
・3事業年度以内に収支の黒字化が見込めること。
という3つの要件を満たしていることが必要となります。
なお、この要件は、製品化のために長期の時間がかかる研究開発の事業を想定しているため、6ヶ月以内の短期間で開始できる事業などは原則、対象となりません。
また、3事業年度以内に事業の黒字化ができる事業計画書が、作成できることが必要となります。
「中小企業の会計に関する基本要領」を適用予定の方
「「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用予定の方」は、自己資金なしで融資を受けることができます。
中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)は、「経理人員が少なく、十分な経理体制を持っていない」といった中小企業のために、実務における会計慣行を十分考慮し、中小企業の実態を考えてつくられた会計ルールです。そのため正式な会計基準よりも要件が緩和されたものとなっています。
また、「中小企業の会計に関する指針」とは、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会の4者が共同で作成した中小企業向けの会計の指針です。中小企業が拠ることが望ましい会計処理や注記等を示しています。
開業予定者はこのいずれかによって会計処理をすることを前提としている場合には、自己資金要件がなくなります
ただし、この場合には次のような注意点があります。
・ 会計処理は原則、税理士または公認会計士よって行うこと。
・ 万が一、後日になってからこれらの適用をしていないことが分かった場合には、融資の引き上げなどの可能性もあること。
特に、決算が終わった後には、公庫から決算書の提出を求められることがあり、その場合には適用がされていないということがばれてしまうので、シッカリと継続するということが求められます。
自己資金に関するその他の疑問
自己資金の概要や、自己資金がなくとも申し込めるケースについてはおわかりいただいたと思います。しかし、さらに「本当に融資が出るの?」とか「自己資金が足りない場合にはどうなるの?」といった、突っ込んだ疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
そこで、ここではこれらの疑問について解説します。
例外に該当すれば、本当に希望額が出るのか?
上記7つの例外に該当すれば、新創業融資制度の申込みができるということはわかりましたが
「本当にこの要件を満たしたら、本当にそれだけで融資が出るのか?」
ということについてはどうなのでしょうか?
この点について公庫ではこのように話しています。
つまり、例外ケースに該当する場合には、自己資金がなくとも新創業融資制度の申込みをすることはできるが、自己資金があるかないかは融資審査での判断のポイントになるということです。
このことから、119番資金調達NETでは、
「まったく自己資金がない状態で、300万円以上の融資を引き出すのは難しい」
と考えています。
なぜなら、
● 日本政策金融公庫では300万円を境に、融資の審査のハードルが上がる
● 例外規定があるとはいえ、自己資金がある場合よりは分が悪い
からです。
したがって、この例外規定をつかえば新創業融資を申し込むことは可能ですが、あまり大きな金額は期待しない方がよいと思われます。
自己資金の何倍まで融資が出るのか?
それでは、
「自己資金額の何倍くらい融資が出るのか?」
ということについてはどうなのでしょう?
新創業融資制度では、最大で「自己資金の9倍」 までの融資が受けられることになっています。
※ 1割分については自己資金を使用。
しかし、実際にそこまでの金額を借りるのは難しく、一般的には
「 自己資金の3 〜4倍が融資の出る上限 」
となっています。
つまり、自己資金が300万円ならば、1,000万円前後が実質的な限界ということなります。
自己資金が少ない場合には、どうする?
では、さらにもし
「自己資金は200万円だが1,000万円の融資が欲しい!」
というケースはどうでしょう。
このケースでは、先程の自己資金の3 〜4倍程度という融資の目安大きくを超えてしまっています。
このような場合、119番資金調達NETでは
「 その自己資金額にあわせたレベルに計画を修正する 」
ということをおすすめしています。
つまり、自己資金が200万円しかないのであれば、申し込む金額も最大800万円くらいまでに抑えた計画にするということです。
もし、これで不足が生じる場合には、制度融資(信用保証協会付融資)を併用することによって、不足分を補うことができます。
参 考 これを知れば創業融資が2倍になる!日本政策金融公庫と信用保証協会融資の違い。
自己資金になる・ならないもの
貯めた経緯が大きなポイント
では、次にどのようなものが自己資金にあたるかについてですが、以下のようなものは自己資金として認めてもらえます。
自己資金として認められるもの
◆ 退職金や生命保険の解約金など、その出所がハッキリしているお金
◆ 親などからもらったお金
◆ 自分の資産を売却して、その経緯がわかるお金
◆ 相続により得たお金
◆ 会社の場合の出資金 など
これらに共通する特徴が、「出どころのわかるお金」であるということです。
逆に、次のようなお金は自己資金とは認めてもらえません。
自己資金と認められないもの
◆ 通帳に入金されていてもその出所を説明できないお金
◆ 親や他人から借りたお金
◆ 他から融資されたお金
◆ 法人設立のために支出した費用
なぜこれらが自己資金として認められないかといえば、
「自分で貯めたという経緯を証明できない」
ものだからです。
貰ったお金や借りたお金は自己資金になる?
自己資金で、注意すべき注意すべきなのは次の2点です。
◆ 「親などからもらったお金」はOK! ◆ 「借りたお金」はNG! |
たとえ親であっても借りたお金は、返済の義務があるため自己資金にはなりません。
なお、以前は親からもらったお金であっても、そのもらった経緯がわからないものについては自己資金として認めてもらえませんでした。なので、うっかり親から資金を現金でもらった場合には、自己資金ということもあったのです。
しかし、最近、東京都の制度融資ではその取扱いが緩くなり、親から現金でもらったお金でも、自己資金として認められるようになりました。
参 考 東京都で創業する人、必見。信用保証協会から聞いた重要ポイント。
ちなみに、
自己資金の確認は金融機関の人間が直接、通帳を見てチェック
します。なので、ごまかしはききません。
その他
新創業融資における自己資金は
「 創業事業のために使うお金 」
であることが必要です。
なので、仮に通帳に何千万円のお金ががあっても、実際に事業に使えるお金が100万円しかないのであれば、100万円しか自己資金にならないということになります。
また、これとは逆に「通帳には500万円が入っているけど、そのうち300万円しか自己資金にしたくない!」というケースもあります。
このような場合には、面談の時に「この500万円のうち自己資金にするのは300万円だけです。」と言えば大丈夫です。
なお、事業計画書を作る場合には、自己資金の額だけでなく「創業経費とのバランス」や「返済の根拠」なども重要なポイントとなります。
この自己資金と融資額のバランスが崩れていると、評価される事業計画書とならないため注意が必要です。
参 考 「絶対した方がいい!創業計画書を作成する前の5つの確認」
自己資金をごまかしたらどうなる?
仮に通帳に500万円の残高があり、これを全部自己資金と申告して、その結果1,000万円の融資の獲得に成功したとします。
この場合の事業計画は「500万円+1,000万円の計1,500万円」を総額で使うものとなります。
しかし、もし、1,500万円のうち融資を受けた1,000万円しか使わず、自己資金の500万円は使わないとしたらどうでしょう?
これだと、金融機関から借りたお金だけで事業ができてしまいますよね。
けれど、このようなことはやめた方がよいでしょう。
なぜなら、
融資の使い方について、後日、報告や証拠の提出を求められる可能性がある
からです。
たとえば1,500万円のうち、500万円を運転資金、1,000万円を設備で使う計画があるとしたら、1,000万円の設備がキチンと購入されたかどうかを見られます。
そして、このような行為がばれた場合には、
● その差額の融資の返還を求められる ● その後の融資が受けられなくなる |
というリスクがありますので、くれぐれもこのような詐欺的な使い方はしないようにしてください。
自己資金に関する間違ったうわさと正しい知識
自己資金については、ネットなどでいろいろな噂がされていることがありますが、これらの多くは何の根拠もないものだったりします。
そこで、ここではこのような噂のいくつかを取り上げ、それに対する正しい考え方を記載しましたので、融資申込みの参考にしてください。
「初めに100万円の見せ金を用意できれば、これをもとにして日本政策金融公庫で最大900万円の融資がうけられる。また、この融資を自己資金にすることにより、さらに信用保証協会付融資を受けることができる。 」【✕】
そもそも、融資を受けたお金はあくまで借入金であって、これを自己資金とすることはできません。また、「見せ金」は通帳の動きを見られればすぐにわかってしまいます。
「親や兄弟から借りたお金は自己資金となる」
【✕】
たとえ、親兄弟から借りたものであっても、返済義務のあるお金は自己資金とはなりません。
ただし、それが贈与を受けたものである場合には、自己資金とすることができますが、その場合には、贈与を証明する資料の提出や必要な確認を求められることがあります。
「開業前に支払った経費がある場合、これらはすべて自己資金の一部としてカウントすることができる」
【✕】
開業前に使った費用のうち、
「事業に関して前もって支払ったお金(先払いした家賃など)」
「その支出をを証明できるものがある」
この2点を満たすものについては自己資金として認められます。
しかし、事業に直接関係ない支出や、領収がないもの等については、自己資金と認められないことがあります。
なお、創業時の法人設立登記の費用については、原則として自己資金とは認められません。
「新創業融資を利用する場合には、1/10以上の自己資金がなくとも、事業計画の内容がよければ、融資の対象となる」
【✕】
新創業融資を利用する場合に1/10以上の自己資金が必要という条件をクリアーできない場合には、いくら事業計画書の内容が良くても、この制度を利用することはできません。
しかし、「現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方」などといった一定の要件に該当する方については、自己資金がなくとも新創業融資制度を申し込むことができます。
「法人で創業融資の申込みを行う場合、登記簿謄本に記載された資本金の額を自己資金として認めてもらえる」
【✕】
法人を設立して融資の申込んだ場合でも、「資本金の額」=「自己資金」となるわけではありません。
このような場合でも「どうやってその資本金を貯めたのか?」といった確認は通常の場合と同じように行われます。
「日本政策金融公庫と信用保証協会の融資(制度融資)を同時に申し込むことができる」
【〇】
日本政策金融公庫の融資と制度融資は別の融資制度なので、これらは同時に申し込むことができます。
同じじゃない!他の融資の自己資金
「制度融資」の自己資金には要注意!
創業者の方が利用できる融資には、日本政策金融公庫の新創業融資制度とは別に「制度融資」というものがあります。
しかし、新創業融資制度と違って、この「制度融資」はそれぞれの行政(都道府県または市町村)が行うものなので、その内容も地域ごとに違うものとなっています。
そのため自己資金についてもこれを不要とするところがある一方、かえって要件の厳しいところなどバラツキがあります。
参 考 日本政策金融公庫と制度融資の比較と対策の違い
なお、東京都の制度融資の一種である「創業」では、その特徴は以下の通りとなっています。
東京都制度融資「創業」の自己資金の取扱い
◆ 開業前の方については、自己資金+2,000万円が融資限度額となる。
◆ 以下の場合は、その返済額の2年分を差し引いたものが自己資金となる。
・ 住宅ローン
・ 長期の設備の借入金
◆ 上記以外の借入金については、その全額を引いた残りが自己資金となる。
このように東京都の創業融資では、ローンや設備の借入金がある場合はその2年分を、その他の借入金についてはその全額を、差し引いた残りしか自己資金として認めてもらえません。
参 照 東京都で創業する人、必見。信用保証協会から聞いた重要ポイント。
このように制度融資では、それぞれの制度で要件が異なるため、事前にシッカリと確認しておく必要があります。
日本政策金融公庫の担当者に聞いてわかった、その他の疑問
最近の新創業融資制度について、直接、日本政策金融公庫の担当者の方にいろいろと確認してみました。以下はその時のやり取りの一部です。
A.これら一連の改正は、政府の創業者をもっと広く輩出したいという意向にもとづいた政策の一環として行われたものである。
A.これらは制度の要件なので、誰であっても適用となる。
ただし、だからと言って、皆が限度額の融資が受けられるかといえばそういうことではない。
A.そのような事例はある。しかし、それはかなり特別なケースであり、一般的には自己資金の2~3倍程度の融資が、現実なラインだと思う。
また、貸すか貸さないかの実態的な審査についてはこれまで通りなので、申込み条件が緩くなったからといって審査が容易になったというわけではない。
合法的にできる「自己資金」の増加法
これまでの説明で、
「自己資金がどういうものなのか?」「どんなものが自己資金になるのか?」
がおわかりいただけたと思います。
しかし、これから創業する方の中には
「自己資金が少なくて、申し込めない」
「あともう少し、自己資金を増やしたい」
という方もいらっしゃるでしょう。
そこで、ここではそんな方のために「合法的に自己資金を増やす方法」をご紹介します。
1.会社を作って出資者を集める。
現在は、一人だけで会社を立ち上げる方が増えていますが、これだけでは思うように資金が集められない場合も少なくありません。
なのでこのような場合には、一人からの金額は少なくとも「できるだけ多くの人から出資を集める」ということが資本金集めの基本となります。
また、現在の会社法では、定款の定め方によって
● 出資額は少なくとも経営権を確保する ● 配当に優先順位をつける |
などということができるようになっているので、この規定をうまく利用すれば、出資額に関係なく経営権の設定をすることができます。
2. 「現物出資」を併用する。
会社の設立する時に資本金にすることができるのは、金銭だけではありません。
自動車や什器といった、発起人個人の財産などでも出資することもできます
このような出資の方法を「現物出資」といいます。
この方法を利用すれば、預金に加えてさらに自己資金を大きくすることができます。
その詳細な手続きについてはここでは省きますが、現物出資を利用する場合には次のような点に気をつける必要があります。
現物出資における融資のポイント
◆ 現物出資の評価は、時価相場と同程度の額であること。
◆ 現物出資だけでなく、すぐに使える資金も用意できていること。
なお、現物出資は会社の設立登記の時にしかできないので、ご注意ください。
3.事業開始前に支払った費用を自己資金とする(「みなし自己資金」の活用)
現物出資の方法は、手っ取り早く自己資金の額を増やすにはいいのですが、
〇 原則、会社の設立時にしか使えない
〇 大きな金額になりにくい
〇 個人事業では使えない
などといった制約があります。
そこで、自己資金を増やす最後の手段が「みなし自己資金」の活用です。
この「みなし自己資金」とは
「融資前までに事業のために使った費用については、これも自己資金として認める。」
というものです。
具体的には以下のものが該当します。
みなし自己資金として認められるものの例
◆ テナントの契約にかかった手付金や、先行して行った内装の費用
◆ その他の事業開始前に支払った事業に関する支出
みなし自己資金として認められないものの例
◆ 事業との関連性か薄い支出(打ち合わせのた目の食事代や接待費)
◆ 支出から長時間が経過し、事業との関連性が認めにくいもの
なお、「事業の経費を先に払って、通帳の残高が減ってしまったら、その分自己資金も減るのでは?。と心配される方がいます。しかし、これらの先払いした費用が事業に関するものならば、その分も自己資金として認めてもらえるので大丈夫です。
1ケ月前の自己資金額は500万円だったが、先に事業の経費を300万円支払った。
この場合、通帳の残高200万円だけが自己資金になるのか?
A
現在の残高200万円+事前に支払った経費300万円(みなし自己資金)=500万円が自己資金として認めてもらえる。
なお、この場合に自己資金として認めてもらうためには、支払ったものの領収書(領収書が出ないものについては支払いを控えたメモ)が必要となります。
また、以上は日本政策金融公庫の融資の場合の話となりますが、制度融資の場合では、それを主宰する都道府県や市町村により自己資金として認められる対象や範囲が異なりますので、ご注意ください。
自己資金に関するこんな事例
自己資金に関していくつか変わった事例がありますので、ご紹介します。
以前に私のお客さんで、自分の知り合いから開業祝いとして金の塊をもらった方がいました。
これが自己資金にできるかについて公庫に確認したところ「正規の貴金属商で鑑定したもらった証明と、直近での相場価格がわかる資料があれば自己資金として認める」との回答がなされました。
以前に知り合いの方が、自己資金を大きく見せようと考え、休眠中の会社を買い取り、商号や本店、役員をすべて入れ替えて融資の申込みをした人がいました。
しかし、公庫ではその過去の登記簿を取り寄せて確認しただけでなく、途中の期間についての決算書の提出を求めたため、実質的な自己資金がないことがわかり、申し込みは失敗に終わりました。
500円玉貯金がまとまった額となったので、これを自己資金にしたいと考えた方がいましたが、このようなタンス預金は自己資金として認められません。そこで彼はそのお金を一時的に定期にし、これを解約したものを自己資金として利用しようとしました。アイデア的にはなかなか良かったのですが、「定期として預けた期間が短すぎる」という理由で、結果的には自己資金と認めてもらえませんでした。
しかし、このようなタンス預金でも最低1年以上預金または定期に入れて預けておけば、これを自己資金として認めてもらえることとなっています。
まとめ
今回の新創業融資と自己資金に関してまとめると、以下の通りとなります。
◆ このうち、1回以上の税務申告をしていない方については、1/10以上の自己資金が必要。
ただし、7つの例外に該当するときは、自己資金がなくとも融資の申し込みができる。
◆ 自己資金は、本当にその事業に使う分だけが対象となる。
◆ 給与や退職金、贈与されたお金などは自己資金となる。
しかし、借りたお金やタンス預金、出どころ不明のお金などは自己資金とならない。
◆ 安全な融資申込額は、自己資金の3~4倍が目安。
◆ 6ヶ月~1年前までの間に、公共料金、各種ローンなどに支払いの遅れや未払いがある場合には、融資は難しくなる。
◆ 新創業融資と制度融資(信用保証協会付融資)は併用することができる。
このように新創業融資では、他にはない特徴があります。
特に、自己資金については、認められるものや認められないものがある他、どこまでが自己資金になるかがその内容により異なるため、計画を作成する前にシッカリと把握しておく必要があります。
また、自己資金がなくとも融資の申し込みができる例外を活用するときには、自分のケースが該当するかについて、事前に確認しておきましょう。
119番資金調達NETでは、事業計画書の作成代行の他、FCの立上げ・加盟相談の他、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
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