信用保証協会付融資を利用された方の中には、その後の返済が滞り、代位弁済されているという方もいらっしゃると思います。
代位弁済をされると、債務を完済するまで高い損害金を支払わなければならなくなったり、保証や融資が使えなくなるなどにより、その後の経営が厳しいものとなってしまいます。
しかし、必ず完済までこの状況が続くかといえば、そうではありません。そのような方については、救済策の一つとして、信用保証協会の求償権を消滅できる制度が設けられています。
これを「求償権の消滅保証」といいます。
ここではこの求償権消滅保証の概要と要件についてご説明します。
求償権の消滅保証制度の概要
求償権とは?
企業が信用保証協会の保証付き融資(「制度融資」を含む)を利用し、その返済ができなくなった場合には、信用保証協会は金融機関に対してその残債を肩代わりします。そして、それ以降は信用保証協会が金融機関に代わって、債務者に返済を請求することとなります。
この場合の信用保証協会が企業に返済を求める権利のことを「求償権」といいます。
この求償権が残っている間は、その情報が信用情報登録機関に登録されるため、完済するまで信用保証協会やその他の金融機関、ローンなどの利用ができなくなります。
「求償権消滅保証」とは?
しかし、それでは、まじめに返済を続けている企業の再生の途を閉ざすことになってしまいます。そこでこの特例として平成18年4月から一定の要件を満たす企業については、信用保証協会がその求償権を消滅させるための保証制度「求償権消滅保証」を新設しました。
この「求償権消滅保証」とは、信用保証協会が求償権を持つ債務者に対して、正常な保証枠を供与し、これにより求償権を消滅させるという、いわば、信用枠の借り換えのような制度です。
これをすることにより、以前の不良債権的な扱いであった求償権がなくなり、正常な保証枠となることから、その後については再び信用保証協会を利用することが可能となります。
「求償権消滅保証」を利用するための要件
この制度を利用するための要件は、信用保証協会によって異なりますが、新潟県の例でいえば、以下の通りとなっています。
求償権消滅の要件(新潟県信用保証協会)
◆ 一定の機関等の支援※にもとづく、再生計画の作成ができること。 ◆ 諸経費の削減及び遊休資産の処分等の自助努力を誠実に行っているこ と。 ◆ 業況不振の原因を招いた経営者等が、退任若しくは役員報酬を削減していること又は個人財産の処分を行っていること等により、一定の経営 責任を果たしていること。 ◆ 実現性の高い経営改善計画を策定すること。 |
※ 一定の機関等の例
・ 中小企業再生支援協議会
・ 独立行政法人中小企業基盤整備機構
・ 中小機構が出資を行った投資事業有限責任組合
・ 株式会社整理回収機構
・ 株式会社地域経済活性化支援機構
・ 特定認証紛争解決事業者
・ 私的整理に関するガイドライン
・ 特定調停に関する法律に基づく調停
・ 経営サポート会議
・ 再生審査会
・ 創業・再挑戦審査会
但し、実際の適用にあたっては、これ以外にも「納税ができていること」、「他の金融機関や債権者に対しても、ある程度の弁済ができること」などの条件がつくことがあります。
求償権の消滅保証制度の仕組み
この「求償権の消滅」制度は、次のような形で行われます。
【代位弁済による求償権の発生】 A社はB銀行から信用保証協会の保証付融資3,000万円を借りたものの、最終的に2,000万円の支払いができずに代位弁済をされたとします。【求償権消滅保証の適用】 その後、信用保証協会によりA社の返済実績が評価され、「求償権消滅保証」を適用することとしたとします。【信用保証協会によるB銀行への信用保証の実行】 この決定にもとづき信用保証協会は、B銀行に対して残債と同額の2,000万円の信用保証を行います。【B銀行によるA社への融資の実行】 B銀行では、あたらに供与された求償権消滅保証にもとづいてA社に対して、2,000万円の融資の実行をします。【A社による信用保証協会への返済】 A社は、金融機関から新たに借り入れた2,000万円の融資で、信用保証協会へ通常通りの弁済をします。この場合には遅延損害金ではなく、通常の利息が請求されます。 |
このように求償権消滅保証をうけた企業は、新たな保証により代位弁済された保証を清算し、そのうえで、新規に融資された資金で信用保証協会に返済をしていくことになりますが、この時点ではすでに求償権は残っていないため、A社はその実力や返済状況によってはさらに新規の保証付き融資をうけることが可能となります。
求償権消滅保証のポイント
求償権消滅保証の適用を受けるためには、以下の点がポイントとなります。
1. 中小企業再生支援協議会などの一定の機関等の支援を受けられること。
求償権消滅保証の適用を受けるためには、一定の公的な機関の支援を受けられることが大前提となります。この対象となる支援機関には数多くの種類がありますが、その中でも中小企業再生支援協議会は47都道府県に窓口があるため、一般の方が最も利用しやすい支援機関となっています。 |
2. 実効性の高い計画を作成できること。
「実効性の高い」計画とは、絵にかいた餅のようなものでなく、その内容が妥当でかつ、実現できる見込みが高いものをいいます。しかし、このような計画は、専門性が高く、信用保証協会の意向も汲んだものであることが必要なため、その作成は専門家に任せた方がよいでしょう。 |
3. 諸経費の削減や遊休資産の処分などの自助努力を行うこと。
自分の都合ばかりを主張していたのでは、信用保証協会の理解は得られません。その協力を取り付けるためには、リストラなどによる経費の削減や遊休資産の売却による負債の圧縮という、経営者として当然とるべき対応が計画に盛り込まれている必要があります。なお、この売却すべき資産の中には工場や生産設備などは入らないのが一般的です。なぜなら、これらの資産を処分してしまうと、その後の営業ができなくなってしまうからです。 |
4. 経営者等が、退任若しくは役員報酬を削減していること又は個人財産の処分を行っていること等により、一定の経営責任を果たしていること。
経営破綻の原因を招いた経営者がその後の経営に残るのは、道義的・法的な責任からも、関係者の理解を得られません。そのため、通常は経営者を退任するか、もしくは顧問のような形で残るというのが一般的です。また、個人資産がある場合には、それをどれだけ会社に拠出しているかなどの態度によっても協力の得られ方が異なることとなります。 |
なお、この「求償権の消滅制度」を利用するためには、上記の条件が満たせているだけでなく、半分以上の返済が済んでいることなどが適用の目安とされることがあるようです。
また、他にも信用保証協会に対する弁済だけでなく、他の金融機関や取引先に対して、どれだけ真摯に弁済をしているかといったことも、適用の判断の材料となります。
まとめ
以上のように代位弁済をされたからと言って、それですべて終わりというわけではなく、求償権消滅保証という制度を利用することにより、再起を図ることが可能です。
とはいえ、その適用を受けるためには高いハードルがあるため、まずは事業再生の専門家に意見を求めたうえで、準備・行動をすることをおすすめします。
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