サービス業や小売り業をされている方の中には
「景気が悪いときに使える特別な制度がほしい」
「信用保証協会の保証枠をもっと増やしたい」
とお考えの方もいるのではないかと思います。
そんな方にピッタリなのが「セーフティネット保証制度(4号、5号)」や「危機管理保証制度」といった制度です。
これは、現在、利用している信用保証協会の保証枠を最大で3倍にするという、まさに資金繰りに困っている経営者にとって頼もしい味方です。とはいえ、誰もが無制限で使えるわけでなく、また、この制度特有の条件などもあります。
ここでは、これらの制度がどのような内容で、どんな人が対象となって、どのような条件を満たせば利用できるのかということについて解説いたします。
セーフティネット4号保証、5号保証、危機管理保証は、「伴走支援型特別保証制度」に統合されました。これらの認定制度自体は存続していますが、これらの制度を利用した保証制度は伴走支援型に移行されましたのでご注意ください。
※ 詳細については新設「伴走支援型特別保証制度」とは?をご参照ください。
セーフティネット保証とは?
セーフティ保証の概要
「セーフティネット保証」とは、「業況の悪化」や「自然災害」などの理由により、経営が困難な中小企業について、信用保証協会が特別保証枠を提供することにより融資を受けやすくするための制度をいいます。
また、この保証を使えば、制度融資がおりやすくなるなどの利点があります。
つまり、この制度を簡単にいえば、一定の理由により経営状態の良くなくなっている企業に対して、特別な保証をするといったものとなります。
セーフティネット保証を利用するためには、主に
① 一定の要件に該当すること ② 市区町村の認定を受けること |
という、2つの要件を満たす必要があります。
なお、コロナウイルス特例措置による無担保・無利息の融資をご希望の方は「最新!コロナ特別融資の概要と5つの特徴」をご参照ください。
また、個人で最大60万円までを無利息で借りられる緊急貸付制度については「個人向け緊急小口資金の特例について」の記事をご参照ください。
セーフティネット保証のメリット
セーフティネット保証には、次のようなメリットがあります。
◆ 低金利で信用保証協会の保証を利用することができる。 ◆ 通常の保証枠とは別枠の保証を利用することができる。 |
追加で利用できる保証枠
⦿ 普通保証 2億円以内 ⦿ 無担保保証 8,000万円以内 ⦿ 無担保無保証人保証 1,250万円以内 |
通常、中小企業はそれぞれ信用保証協会の保証枠を持っていますが、その枠の金額は、普通保証 2億円以内、無担保保証 8,000万円以内、無担保無保証人保証 1,250万円以内となっています。
しかし、このセーフティネット保証を利用すれば、上記の枠とは別に同じ額の保証枠を使えるようになるわけです。
たとえば、現在7,000万円の無担保の枠を利用している会社があるとします。
この会社が不景気のため、あと4,000万円を無担保で借入れしたいと考えたとしても、この会社の無担保はあと1,000万円しか残っていません。
なので、本来であれば、差額の3,000万円については、担保や保証人を提供しないと保証をうけられないということになります。
しかしこのような場合でも、このセーフティネット保証を利用すれば、別口で最大8,000万円の保証枠を利用できるので、3,000万円についてもこちらの枠で対応できるということになります。
セーフティネット保証の一般的な要件
セーフティネット保証を利用するためには、以下の条件のうちのいくつかを満たす必要があります。
具体的にどのような条件が必要になるかは、何号の保証を利用するかにより変わってきます。
2. 指定業種※2に属する事業であること。
3. 最近3か月間の売上高等が前年同期比で一定の基準※3以上減少していること。
4. その事由について事業所の所在地を管轄する市区町村長の認定を受けること。
※1 セーフティネット保証の種類
1号:連鎖倒産防止 2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限 3号:突発的災害(事故等) 4号:突発的災害(自然災害等) 5号:業況の悪化している業種(全国的) 6号:取引金融機関の破綻 7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整 8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡 危機関連保証制度(危機関連保証制度は、緊急時に特別枠として指定されるものです。) |
※2 指定業種とは、セーフティネットの適用ができる業種として政府が指定したもの。
※3 このパーセンテージは経済状況により変動します。
たとえば、新宿区の場合では以下のような認定が必要となっています。※5号認定の例
セーフティネット4号保証について
セーフティネット4号保証とは?
「セーフティネットの4号保証」とは、自然災害などの突発的事由(噴火、地震、台風等)により経営に支障を生じている中小企業者に対する補償です。
信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で、融資の 100%を保証する制度となります。
今回、騒動となったコロナウィルスによる売り上げの減少については、この4号による自然災害による突発的な事由の一種として指定がされました。
セーフティネット4号保証の要件
セーフティネットの4号保証を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
2. 自然災害等の突発的事由(噴火、地震、台風等)により経営の安定に支障を生じている
3. 最近1か月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して 20%以上減少することが見込まれること。
4. その事由について事業所の所在地を管轄する市区町村長の認定を受けること。
(上記条件は令和2年3月16日現在のもの)
セーフティネットの4号の保証内容
セーフティネットの4号保証を利用した場合の保証内容は、次の通りとなります。
◆ 保証限度額 一般保証とは別枠で2億8千万円(うち、無担保保証は8千万円以内)
なお、この4号保証は、次で紹介する5号保証と併用することができますが、その場合には両方を合わせても保証枠は2億8,000万円以上とはなりません。
また、5号保証における保証割合は80%であるのに対して、こちらの4号保証では100%となっています。
「100%の保証」とはどういうことかといえば、
この保証を使った融資が返済ができなくなったときに、その返済できない額の100%を信用保証協会が肩代わりして金融機関に返済(代位弁済)するということを意味します。
「20%以上の減少」について
セーフティネットの4号保証を利用する場合は、その条件の中に
「最近1か月の売上高等が前年同月に比して20%以上減少しており、かつ、その後2か月を含む3か月間の売上高等が前年同期に比して 20%以上減少することが見込まれること」
というものがあります。
これはどういうことかといえば、
今年の2月の時の売上げが去年の2月の売上げと比較して20%以上減少していて、かつ、その後の3月と4月を含む3ヶ月間(つまり、2〜4月)の売上げが、去年の2〜4月の売上げと比較して20%以上減少することが見込まれるものであることという意味です。
例えば下の例では、2月の売上げは対前年比で25%であり、基準の20%以上という要件を満たしています。
これに対して3-4月の見込みについては、17.5%と20%の基準を超えていません。
しかし、2-4月の売上げ合計は2,400となることから、トータルでみれば減少率20%と要件を満たすことになります。
2月売上げ | 3-4月見込み | 計 | |
2019 | 1,000 | 2,000 | 3,000 |
2020 | 750(減少率25%) | 1,650(減少率17.5%) | 2,400(減少率20%) |
このようにキチンとした根拠があれば、今後の2ヶ月については予測値でよいというところにこの制度の特徴があります。
セーフティネット5号保証について
セーフティネット5号保証とは?
セーフティネット5号保証とは、「全国的に業況の悪化している業種に属することにより、経営の安定に支障を生じている中小企業者が対象です。
その内容は、信用保証協会が通常の保証限度額とは別枠で、融資の80%の保証を行うものとなります。
いわゆる「業況悪化業種用」ともいえる制度で、8号まであるセーフティネットの中でも、最も頻繁に利用されています。
セーフティネットの5号保証の要件
セーフティネットの5号保証を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
2. 最近3か月間の売上高等が前年同期比で5%以上減少していること。※1
または、製品等原価のうち20%以上を占める原油等の仕入価格が20%以上上昇 しているにもかかわらず、製品等価格に転嫁できていていないこと。
3. その事由について事業所所在地を管轄する市区町村長の認定を受けること。
(上記条件は令和2年3月16日現在のもの)
※1 時限的な運用緩和として、2月以降直近3ヶ月の売上高が算出可能となるまでは、直近の売上高等の減少と 売上高見込みを含む3ヶ月間の売上高等の減少でも可となっています。
例)2月の売上高実績+3月、4月の売上高見込み
この制度では、
➀ 最近3か月間の売上高等
➁ 2月以降の3ヶ月間の売上げの見込み
いずれかで、売上げ(または、見込みを含む売上げ)が前年同期比で5%以上減少していればよいということになります。
また、仮に売上高の減少が5%以上ない場合でも、20%以上の仕入要件を満たせば、この保証を利用することができます。
セーフティネットの5号の保証内容
セーフティネットの5号保証を利用した場合の保証内容は次の通りとなります。
◆ 保証限度額 一般保証とは別枠で2億8千万円(うち、無担保保証は8千万円以内)
なお、この5号保証は、先の4号保証と別々に利用することができますが、その場合には両方を合わせても保証枠は2億8,000万円以上とはなりません。
セーフティネット4号と5号の違い
以上のように微妙に要件と効果が異なる4号と5号ですが、その違いをまとめると次のようになります。
1.基本的な条件の違い 4号-「自然災害等の突発的事由」 5号-「業況の悪化」2. 事業年数の要件 4号-「指定地域で1年間以上継続して事業を行っていること」 5号-特になし3. 指定業種に関する条件 4号-特になし 5号-「一定の業種(指定業種)に属すること」 4. 売上げの減少率の違い 5. 保証割合の違い |
新設!「危機関連保証制度」について
「危機関連保証制度」とは?
政府は、最近のコロナウィルスにより経済活動が低下したことを受け、緊急的に「危機関連保証制度」を発動することを決定しました。
この制度は今回の危機時に、全国・全業種※を対象として、特別な信用保証枠が活用できるようにするものです。
その最も大きな特徴は、
通常の信用保証(2.8億円)だけでなく、セーフティネットの保証枠に加えてさらに特別の信用保証枠(2.8億円)を使えるようにする
というものです。
これにより、最大で8.4億円(2.8億円×3)の信用保証枠が利用できることになります。
危機関連保証制度の要件
危機関連保証制度を利用するためには、以下の条件を満たす必要があります。
2. その事由について事業所の所在地を管轄する市町村長又は特別区長の認定を受けること。
(上記条件は令和2年3月16日現在のもの)
危機関連保証制度の保証内容
「危機関連保証制度」の保証内容は次の通りとなります。
◆ 保証限度額 一般およびセーフティネット保証とは別枠で2億8千万円(うち、無担保保証は8千万円以内)
なお、危機関連保証制度は、通常の信用保証枠およびセーフティネット保証枠(4号、5号)と併用して利用することができるため、最大で8.4億円の信用保証枠を利用できることになります。
一般保証枠 2.8億円 |
+ | セーフティネット保証枠 2.8億円 |
+ | 危機関連保証枠 2.8億円 |
セーフティネット利用時の注意点
以上のようにセーフティネット保証は、信用保証枠を緊急的に2倍にし、中小企業の融資を支援するものですが、その利用にあたってはいくつかの注意点があります。
セーフティネット保証を利用するには、あらかじめ定められた条件があります。
したがって、単に経営的に困っているからという理由だけで、すべての方が利用できるというわけではありません。
それぞれの保証の種類ごとに決められた(1~8号および危機関連保証)要件に該当する必要があります。
指定業種に該当するかどうかが要件となっている場合(5号保証など)には、その時点で指定された業種に該当しないと利用ができません。
なお、この業種の中身は約3ヶ月ごとに見直しがされるため、先月には利用できたが今月になったら指定から外されていたということもあります。
一定の売り上げの減少率が要件となる場合については、その時の経済状況によりこの割合が10%や5%になったりすることもあるため、いつも同じ条件ではないということにこ注意ください。
セーフティネット保証では、すべての場合で市区町村の長の認定が必要となります。
この認定をもらうためには、要件に該当する会社が自ら市区町村役場へ出向き、所定の用紙に記入したものに市区町村長の承認印をもらう必要があります。
セーフティネット保証で市区町村長の承認を得られた場合でも、必ず融資がされるとは限りません。
保証は信用保証協会により行われますが、融資の判断は金融機関が行うものであるため、「保証OK = 融資」ではないことにご注意ください。
セーフティネット保証の最大額は2.8億円(無担保無保証枠は8千万)となっていますが、誰もがこの最大枠の利用ができるわけではありません。
実績や規模等により、その会社の利用できる保証枠が決まります。
経営不振時のセーフティネットの使い方
保証率の差で有利・不利が変わる
以上のようにセーフティネット保証には4号と5号があるわけですが、「自分の場合には、どちらを使った方が有利になるのだろう」とその使い分けに悩まれる方も少なくないと思います。
その場合に考えていただきたいのが「 保証の率 」です。
保証協会付きの融資は、通常はどこかの金融機関を経由して利用することになりますが、その金融機関がかなり気にするのがこの保証の率です。
今回の4号と5号の保証率を考えた場合、5号保証は80%ですが、これに対して4号保証は100%となっています。
これは保証を使う側にとってはあまり関係のないことですが、金融機関にとっては、万が一の場合に20%分の負担をしなければならなくなるため、大きな問題となります。
つまり金融機関にとっては、80%の保証よりも100%の保証の方が支援がしやすいといえます。
経営内容が低下している企業というのは、金融機関から見れば支援がしにくいものですが、まずはこのような保証率のハードルがなくなれば、その分、支援をしやすくなると言えます。
一本化ができるもの・できないもの
これらの保証を使う上で考えるべきなのは、過去の保証協会付き融資との一本化です。
もし、過去の融資の残りを新たに借りるセーフティネット等で一本にまとめることができれば、過去の分についても条件がよくなる可能性があります。
しかし、どれでも一本化できるかといえばそういうわけではなく、融資の種類によって一本化できるものとそうでないものとがあります。
なぜ、このようなことになるかといえば、
「保証率が異なるもの同士では一本化ができない」
というルールがあるためです。
たとえば、4号保証は100%の保証率ですが、5号保証では80%の保証率となっています。
したがって、過去に5号保証で融資を受けていてその残債がある場合、これを新規に借りる4号保証と一本化することはできません。 ※逆の場合も同じ
これらの組み合わせをまとめると、次のような形となります。
保証の一本化の可否の一覧
新規の融資 | ||||
既存の融資 | 4号(100%) | 5号(80%) | 危機管理(100%) | 一般(80%) |
4号保証(100%) | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
5号保証(80%) | ✕ | 〇 | ✕ | 〇 |
危機管理保証(100%) | 〇 | ✕ | 〇 | ✕ |
一般融資(80%) | ✕ | 〇 | ✕ | 〇 |
この表を見ていただけばわかるように、同じ保証率の者同士でなければ一本化ができないことにご注意ください。
このようにセーフティネットについては一本化できるものとできないものがあるため、もし、これから一本化を考えている方は、事前に金融機関にご確認いただければと思います。
まとめ
この記事では、セーフティ保証制度のうちの4号と5号、それと危機関連保証制度について解説させていただきましたが、これだけの保証制度が同時に発動されるというのは過去に例のないことです。
コロナウィルスなどの影響により、売り上げが低下している、経営が厳しい状況にあるという方は、ぜひ、この機会にこれらの制度を利用して資金繰りの確保につなげていただきたいと思います。
,ただし、新規の借入れについては当然ですが、既存分の一本化についても、事業計画書の作成が必要となる場合があります。
したがって、もし、一本化をするのであれば、シッカリとした事業計画書を作成して申し込むようにしてください。
なお、119番資金調達NETでは、新規開業資金の申込みのサポートの他、、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
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