中小企業の方なら、資金調達でおそらく一度はお世話になっている信用保証協会ですが、この信用保証制度が改正されたということをご存知でしょうか?
今回の改正は、制度融資の借りやすさなどにも影響してくるものなのですが、意外と多くの方がご存知ありません。
そこでここでは、どのような改正がされたかと、今後の状況がどうなるかについてご説明いたします。
信用保証制度の改正の概要
信用保証の制度が、改正され平成29年6月14日に公布されました。
主な改正点は以下の通りです。
1.「信用保証制度の改正の概要」
【新規セーフティネット制度の創設】
大規模な経済危機、災害等の事態に際して、予め適用期限を区切って迅速に発動できる新たなセーフ ティネット制度として
「危機関連保証」(従来の保証限度額とは別枠で最大2.8億円の保証を実施)
が創設されました。 ※保証割合は100%
これまで信用保証制度では「連鎖倒産防止」や「業況の悪化」、「金融機関の破たん」などといった7種類のケースを対象に有利な条件で貸し出しを行う「セーフティネット融資」を行ってきました。
今回の改正では、最近の地震や津波といった自然災害の頻発を背景として、これらに対応できるよう「危機関連保証」を追加し、制度の拡充をすることとなりました。
【特別小口制度の拡充】
小規模事業者の持続的発展を支えるため、
特別小口制度の限度額が拡充され、1,250万円→2,000万円に増額
されました。
これまでも、小規模の事業者を対象とした小口制度が存在しましたが、その保証の上限額は1,250万円となっていました。今回の改正ではこれが2,000万円まで引き上げられたため、今後、より大きな小規模事業者の資金ニーズに応えられるようになりました。
なお、この特別小口制度は、責任共有制度の対象外となるため、融資額の100%について信用保証協会の保証を受けることができます。
【創業関連保証の保証限度額の拡充】
創業・事業承継についての中小企業信用保険に関する法律を一部改正し、 創業チャレンジを促すべく、創業関連保証の限度額が1,000万円→2,000万円に拡充
されました。
これまでは、創業者の方が利用できる創業融資の信用保証の限度額は一部のものを除き、1,000万円が上限とされていました。しかし、今回の改正により、これが2,000万円まで引き上げられたことにより、創業者であってもより大きな融資を獲得できる可能性が高まりました。
【事業承継時の資金への拡充】
事業承継を一層促進するため、一定の法の認定を受けた中小企業の代表者個人が承継時に必要とする資金(株式取得資金等)を信用保険の対象とすることとなりました。
これまで、代表者が企業の事業承継をする際に必要となる、株式の買い取り資金などについては信用保証制度の対象外とされていました。しかし、今回の改正では、事業承継をよりスムーズに進めるため、このような代表者が承継時に必要とする株式の買い取り資金の調達についても信用保証の対象とすることとなりました。
【経営改善型ファンドへの拡充】
信用保証協会が地方創生に一層の貢献を果たすべく、事業再生ファンドのみならず、創業や中小企業の経営改善を支援することを目的とするファンドへの出資が新たに可能となりました。
【信用保証協会と金融機関の連携の強化等】
信用保証協会の業務に中小企業に対する経営支援を追加するとともに、業務の運営に当たっては信用保証協会と金融機関が連携する旨を規定。 これを踏まえ、以下の措置を実施することとなりました。
①信用保証協会が、金融機関の「プロパー融資」の状況や経営支援の方針等を確認しながら保証を実施することにより、「保証付融資」と「プロパー融資」を適切に組み合わせるリスク分担を行う。
②既存のセーフティネット保証制度のうち不況業種に対するもの(5号)については、金融機関がより前面に立って経営改善や事業転換等が促されるよう、その保証割合(現行100%)を80%とする。
③信用保証協会の業務に中小企業に対する経営支援を追加するとともに、 業務の運営に当たっては信用保証協会と金融機関が連携する旨を規定。
今回の改正の目玉について
今回の改正の概要は以上となりますが、その中で大きな目玉は2つあります。
1)創業業保証と特別小口制度といった従来の制度の上限額の引き上げ
これは単純に利用できる枠の上限が引き上げられたということなので、利用者に取っては喜ばしいこととなります。
しかし、ここで一つ注意してほしいのが、「上限額の引き上げ」=「融資が出やすくなる」ということではないということです。
融資をする際には金融機関による審査が行われますが、今回の改正で上限額が引き上げられたらといって、融資審査の基準までもが緩くなるわけではありません。
いくら上限の枠が引き上げられたからと言ってこれまで1,000万円までしか借りられない実力の企業が、この改正により2,000万円まで借りられるようになるわけではないのです。
したがって、表面的な改正の部分だけをとらえて、安易に喜ぶというのは早計ということになりますのでご注意ください。
2)信用保証協会と金融機関の連携の強化等
まず、上記改正の①についてですが、これまで金融機関では一部の優良企業を除き、中小企業に対しては、原則として、プロパー融資(金融機関が信用保証協会の保証を利用せずに、自らの責任のみで行う貸し出し)ではなく、信用保証協会の保証付き融資で対応するという方針が取られてきました。
つまり、力のない中小企業に対する貸し出しは、リスクのあるプロパー融資ではなく、保証のついた安全な信用保証協会付融資で行うということです。しかし、金融機関が保証付き融資を多用した結果、その財源となる信用保証協会向けの予算が不足しているというのが、この改正の背景にあります。
そのため今回の改正では、金融機関にもっと保証付き融資の比率をおさえ、より多くのプロパー融資の利用をするよう求めてくるものと思われます。
とはいえ、そんな急にプロパー融資で貸せる先が増えるわけではありません。
信用保証協会付融資は使えない、かといってプロパー融資では対応できないとなるとどういうことになるかといえば、考えられるのが「貸し出しの抑制」です。
これまでは何とか信用保証協会付融資を利用することにより、資金繰りをつないできたような企業にとっては、今後、これが今まで通りに利用できないとなると資金調達の手段が大きく制限されることになります。
次に上記の②についてですが、これまでセーフティネット保証制度のうち不況業種に対するもの(5号)を利用して信用保証協会付融資を受けた場合には、責任共有制度の対象外として、貸出額の100%に保証が行われてきました。
しかし、今回の改正では一歩踏み込み、この部分についても一般的な融資と同様、その保証率を80%にまで引き下げるというものです。
最近ではやや景気が上向いていたことから、以前に比べてこの5号保証を利用する方はだいぶ減りましたが、それでも再び景気が悪化してきた場合には、また、多くの方がこの制度を利用することになると思われます。
そうなると、今までは問題なく融資を受けれていた企業でも、今後はその利用が難しくなるということが考えられます。
このように最後の改正点は、規定の上ではサラッと書かれているものではありますが、実はこのように今後の金融情勢に大きな影響を与えるものとなっています。
なお、今回の改正の施行期日は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日とされており、具体的な日程はまだ決まっていないようですが、すでに法律としては決定されているため、近いうちに実施日程も公表されると思います。
このように、今回の改正については、注意すべき点がいろいろとありますが、創業者や中小企業の方は、単に上限額の拡大にのみ目を奪われるのではなく、その裏に隠れているリスクにも気をつけていただければと思います。
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