先日、創業者の方に関する質問を東京都の信用保証協会に確認してきました。
その中で、チョットあやふやになっていた知識の確認ができたとともに、
「これは初めて聞いた!」ということや
「絶対、普通の人は知らないだろうな」
という貴重な情報を仕入れることができました。
どれをとっても、知らないとすごく融資に影響することばかりです。
なので、ここではこれらの情報をシェアしたいと思いますので、これから東京都で創業融資を申し込もうとされる方は、ぜひ、ご参考ください。
普通の人は知らない! 東京都の創業融資の隠れた要件
創業融資の手引きにも、出ていない?
今回、119番資金調達NETが担当者から聞き出した、東京都の制度融資を使って「創業融資」を受けようとする場合に、絶対知っておくべきポイントは、次の通りとなります。
● 「開業前」の場合には、自己資金が大きく目減りする可能性あり!
● 開業届や設立登記をしただけでは、創業融資が使えない?
● 現金でもらったお金でも、自己資金として認められる可能性あり。
● 公庫融資と併用してもよい場合、ダメな場合。
東京都の制度融資 については 手引きがあるのですが、これには融資を受けるための要件が載っているだけで、かなりわかりづらいものとなっています。
※ 東京都制度融資(創業)の案内
とはいえ、はじめにこの融資の概要がわからないと、せっかくの情報も「何を言っているのかピンとこない」となってしまうと思います。
そこで、ここではまず東京都制度融資「創業」の概要のうち、今回の話に関係する部分について簡単にご説明します。
東京都制度融資「創業」の概要
項 目 | 融資の条件 |
申込ができる方 | 〔創業前〕 事業を営んでいない個人であって、1 か月以内に新たに個人で又は 2 か月以内に新たに 会社を設立して都内で創業しようとする計画を有する方 〔創業後〕 創業した日から 5 年未満である中小企業者及び 組合 |
融資限度額 | 3,500 万円(創業前は、自己資金に 2,000 万円を加えた額の範囲内) |
自己資金 | (1)-(2) の額
(1)創業予定の方が事業に充てるために用意した以下の金額 (2)次のア及びイの合計額 |
※ 下線部は、今回のテーマに関係する部分
まずは、以上のことが条件となっているということをご理解の上、以下の説明をご覧いただければと思います。
創業前と創業後とでは、絶対、「創業後」の方が有利!
「創業前」では、申し込める融資額が少なくなる!
上の表の【申し込みができる方】の箇所をご覧ください。
東京都の創業融資では、申し込みができる対象を 「創業前なのか?」または「創業後なのか?」によってわけているというところに特徴があります。
「創業後の方」については、特に問題なく融資を申し込むことができます。
これに対し「創業前の方」については
融資限度額が3,500万円ではなく、自己資金に2,000万円を加えた額の範囲
になるという制約があります。
これは例えば、500万円の自己資金がある方については
開業後 | 3,500万円の申込みができる。 |
開業前 | 2,500 万円の申し込みしかできない。 (500+2,000万円) |
ということを意味します。
このように創業前の状態では、
申し込める金額に制限を受ける
ということになります。
「創業前」だと、自己資金が削られる場合あり!
次に、「創業前の方」か不利となるのは
「 住宅ローンまたは設備のローンがある人は、自己資金から2年分の返済予定額を差し引いた額」
この額しか、自己資金として認められないということです。
例えば、 毎月10万円の住宅ローンを支払っている方で、500万円の自己資金がある方がいたとします。通常ならばこの方は、500万円の自己資金で融資を申し込めることになります。
しかし、東京都の創業融資ではこの制約があるために、この方の自己資金は
ということになってしまいます。
これがもし、20万円の住宅ローンならば
となるので、自己資金は20万円にしかならないということになってしまいます。
なお、東京都の創業融資では日本政策金融公庫と違い、「●●円以上の自己資金がなければダメ」とはなっていません。
しかし、やはり自己資金の多い・少ないは審査に大きな影響を与えます。
参 考 80%以上の人が知らない!「自己資金なし」でも新創業融資は借りられる!
なので、「創業前」の方については、自己資金の部分でも大きな不利となります。
このようなわけで、東京都の創業融資を受ける場合には、開業前より開業後の方が有利といえます。
開業届や設立登記だけでは、創業融資が使えない?
以上のように東京都の制度融資を使って創業融資を利用する時には、創業前より創業後の方がいろいろと有利になります。
でも、何をもって「創業した」といえるのでしょうか?
これは重要なことなのですが、残念ながら、創業融資の手引きにはこのことは書かれていません。
通常、創業をする場合には、「個人事業として創業する」・「法人を設立して創業する」のいずれかとなります。
そして、創業をしたと認められるためには
個人事業 ➡ 税務署に「開業届」を提出する。 法 人 ➡ 法務局で「設立登記」の手続きをする。 |
という手続きが必要となります。
しかし、
「この手続きだけでは、開業したとは認められない」
というのが信用保証協会の見解です。
それでは開業したと認められるためには、これ以外に何が必要かといえば、それは
「 事業に着手したという実績 」
です。
これには、次のようなものが該当します。
事業に着手したという実績
➀ すでに売上げをあげていること ➁ 事業のための仕入をしていること |
なお、信用保証協会では、テナントを借りたというだけでは、必ずしも開業には当たらないと考えているとのことです。
もし、そうだとすると、飲食業のような事業で開業したと認められるのはかなり難しいということになりますが、あくまで現時点ではこのようになっているようです。
つまり、東京都の創業融資を利用する場合には
または + 開業に着手したと
設立登記 (法人) 認められる行為
という2つの条件を満たす必要があるということになります。
しかし、119番資金調達NETでは、多くの飲食店その他の創業融資のお手伝いをしてきましたが、これまで仕入等をしていないことを理由に融資が出なかったということはありませんでした。
なので、この点については、ある程度、「信用保証協会の建前も含まれているのではないか?」とも考えられますが、もし、万全を期すなら、何らかの売り上げや仕入れをしてからの方がよいでしょう。
現金でもらったお金でも、自己資金として認められる可能性あり!
親から現金でもらったお金について
東京都の制度融資で創業融資を利用する場合には、 ある程度の自己資金が必要となります。
日本政策金融公庫のように「創業経費にかかる費用の1/10以上が必要」という、具体的な金額や割合が決められているわけではありません。
しかし、現実的には、自己資金の3~4倍程度が融資の出やすい金額とされています。
参 照 日本政策金融公庫と制度融資の全比較。要件・限度額・金利他
つまり、できるだけ自己資金は多い方が、多額の融資が出やすいわけです。
ここで問題となるのが「現金でもらったお金」です。
これまで信用保証協会では、
「 親などからもらったお金であって、その経緯がわかるものであれば自己資金とみなす 」
としてきました。
しかし、自己資金を現金でもらってしまった場合には、タンス預金と同様、もらったという経緯がわからなくなってしまいます。
そのため、これを自己資金とは認めないという立場を取ってきました。
けれど、最近この規制が緩くなり、
「 親などから現金でもらったお金であっても、これを自己資金としてみなす 」
という方向に変わりました。
とはいえ、もらったという事実がハッキリとわかった方がよいのは当然です。
なので、このような場合には現金でもらうのではなく、できるだけ振り込んでもらうことをおすすめします。
親以外の人からもらったお金について(日本政策金融公庫の場合)
これまでは日本政策金融公庫や信用保証協会では、「親兄弟などの親族」以外の人からもらったお金は、自己資金として認めてもらえませんでした。※ 会社の資本金を除く。
「他人から事業の協力金をもらう。」というのは、通常ではあり得ないという考えだったのです。
しかし最近、日本政策金融公庫では、この点についても制限が緩くなり
「 親兄弟以外の人からでも、開業の協力金としてもらったお金は自己資金として認める 」
ということになったとのことです。
たとえば、これには以下のようなものが該当すると思われます。
◆ 個人事業主で、第三者から提供してもらった協力金 ◆ 法人で出資にしない形でもらった協力金 |
しかし、これはあくまでも日本政策金融公庫の場合であって、信用保証協会ではまだ認められていないようです。
なので、もし、そのような資金がある場合には、まずは日本政策金融公庫の新創業融資制度に申し込んだ方が、自己資金を増やせるということになります。
とはいえ、審査の時には、通帳の通帳の履歴を調べられるというのは、以前と変わりません。
そのため、その内容から不審な点がある場合には自己資金とは認められません。
つまり、なんでもかんでももらったお金といえばよいというわけではないということです。
日本政策金融公庫と併用してもよい場合とダメな場合
創業融資を受ける場合に、日本政策金融公庫または制度融資のどちらか一方だけでは心もとないという場合も少なくありません。
そのため
「この両方をいっぺんに受けられないか?」
ということが問題となります。
この点について信用保証協会の担当者は
「 日本政策金融公庫と制度融資の両方を申し込むことは問題ない 」
とはっきり明言しています。
しかしこのような使い方ができるのは、片方の申し込みだけでは資金が足りなくなるような場合に限るともいっています。
つまりこれはどういうことかといえば、仮に事業に必要な融資額が運転資金1,000万円、設備資金1,000万円の計2,000万円だった場合
融資の併用OK | ● 日本政策金融公庫へ2,000万円の申込み ● 制度融資へ運転資金1,000万円の申込み |
融資の併用NG | ● 日本政策金融公庫へ2,000万円の申込み ● 制度融資へ2,000万円の申込み |
となります。
なお、このダメなケースでは、それぞれに対して融資の全額を申し込んでしまっているからです。
また同じような理由で次のような申し込みもNGです。
● 日本政策金融公庫へ1,000万円の設備資金の申込み ● 制度融資へ同じ設備資金の申込み |
こちらについてはなぜダメかといえば、それは同じ設備について二重に融資を申し込むことになってしまうからです。
特に信用保証協会では、設備資金の融資が出た場合には、その金額をすぐに業者に振り込みをさせますので、場合によっては二重払いとなってしまう可能性があるからです。
このように日本政策金融公庫と制度融資の併用は原則的に OK ですが、 設備資金が重複する申込み方はダメということに注意が必要です。
まとめ
以上のように信用保証協会における創業融資の取り扱いは、以前よりもだいぶ柔軟なものとなってきていますが、これらはあくまでも「原則として」ということであり、申込人の状況によってはまったく別の結果となることもあります。
そのため創業融資で失敗しないためには「あらかじめ、知っている人に聞く」というのが、失敗を防ぐための最も効果的な対策です。
また、ここでご紹介した公庫と協会付融資の同時の申込みをする場合には、その準備や事業計画書の書き方などについて注意しなければならないポイントがありますので、もし、これを行う場合には、専門家に確認した上で行ってください。
参 考 日本政策金融公庫 融資の成功率と獲得額を上げるには?
なお、119番資金調達NETでは、新規開業資金の申込みのサポートの他、、このブログではご紹介していないテクニックや注意点についても、直接、その方の状況にあわせてアドバイスしています。
随時、初回の相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。
※ こちらから電話できます。