私は日本政策金融公庫に融資を断られた。そして、こうして復活した!

日本政策金融公庫

 せっかく日本政策金融公庫に融資の申し込みをしたのに、「断られてしまった」というケースは少なくありません。

通常、正式な審査の上でお断りがあった場合には、その後6か月程度はまともに取り合ってもらうのが難しくなりますが、中には一度断られたけれど、融資を受けることができたという事例もあります。

ここでは、相談のあった方の実例をもとに、「どんなケースで融資の復活ができたのか?」、「どうやってお断りを覆すことはできたのか?」について解説したいと思います。

私は、こうして日本政策金融公庫から断られた

飲食店の創業融資のケース

申込みまでの経緯

Aさんは 2020年8月に開業届を出し、同年の11.末に飲食店の開業を希望していました。

借入希望額500万円に対して、自己資金は150万円ありましたが、そのうちの30万円をメニュー研究のための食べ歩きや交通費、試作品の開発などのためにすでに使っていました。

また、ちょうどその頃はコロナが蔓延し、飲食店の営業の自粛などが求められる状況となっていました。

けれどAさんは、すでにテナントの手付も打っていたことから、当初の予定にあわせて資金の調達をしたいと考え、日本政策金融公庫へ事前の相談に行ったところ、担当者からは
● 自己資金の額に対して申込額が多い
● 営業開始後の売上げに信憑性がない
の2点が問題なので、融資は難しいとの回答がされました。

お断り理由ついての推察

Aさんは本来であれば、メニューの試食や試作に使った経費を「前払いした自己資金」として認めてもらえたのですが、それらの領収書がなかったため、それを説明できませんでした。

その結果、その分の自己資金が目減りしてしまい、公庫に相談したときには実質100万円チョットの金額しか残っていなかったため、公庫からは、借入額に対して自己資金額が少ないと判断されたようです。

また、 A さんの事業計画書では、同種・同程度の規模のお店の集客具合を参考に売上げの計画を立てていましたが、担当者からはいきなりの開業で、既存店と同じレベルの集客は難しいだろうと思われたのがお断りの主な要因と考えられました。

解決の対策と結果

Aさんの申込額に対して自己資金の額が少ないという点については、

● 開業前に行ったお店をできるだけ思い出し、その店名や日付を明確にする。
● それぞれの店で使った金額、頼んだメニューなどを一覧にする。
● メニューの開発費については、 使った食材をまとめ、それをどのようにメニューに反映したかを示す。

などの対応により、実際に経費として支払った額を「前払いした自己資金額」であるということを認めてもらうようと努力しました

さらに、根拠が薄いといわれていた売上げの見通しについては、

● 調査をしたライバル店のメニューをできるだけ集めて、価格の設定が妥当であること。
● 集客面の懸念については、それまでの勤務でお客様や関係者からもらった名刺約800枚をコピーして提出し、問題がないこと

などの準備をし、売上げついての根拠があることを訴えました。

この時は時間がなかったため、再度の事前相談はせずに、本番の融資の申込みをしましたが、審査では指摘箇所が問題になることはなく、無事、希望額500万円の融資を獲得することに成功しました。

 

赤字企業のケース

申込みまでの経緯

開業7年目の B社は、家具を中心とした木工製品の制作・販売をしていましたが、技術的に優れたものがあり、業界紙などでたびたび取り上げられたこともある企業でした。

しかし、景気の悪化による受注減が原因で2期連続で赤字を計上しており、 資本金500万円に対して300万円ほどの債務超過(資産より負債が多い状態)となっていました。

 このような状況の中、B社では当面の運転資金が不足したことから、800万円の融資の申込みをしたところ、日本政策金融公庫からは
● 債務超過が解消できていない
● 全体的な
業況の見通しが暗い
ということを理由に、一度はお断りをされました。

お断り理由ついての推察

B社のように、債務超過状態の会社は、債務者区分の評価が低くなっているため、融資を行うのが難しいという判断になりやすくなります。 参 考 : 企業の運命が決まる債務者区分とは?

そのため今回のケースでも、B社が融資を受けるためには、まずこの債務超過の状態を解消することを求められました。

また、当時、B社はK社からの発注にほとんどの売上げを頼っていましたが、社会構造の変化により、K社本体の経営も苦しくなっていたことから、公庫では業績の回復が厳しいのではないかと考えているとのことでした。

解決の対策と結果

債務超過を解消するためには、本来ならば、利益を出して徐々にこれを解消していくというのが王道ですが、業績が良くない会社ではそれは難しく、また、実行までに長い時間がかかります。

しかし、会社に代表者からの借入れがある場合には、これを資本金に振り替えることにより債務超過をすぐに解消することが可能です。
この手続きをDES(デッド・エクイティ・スワップ)といいます。

この手続きをすることにより、振り替えた金額分だけ資本金を増やすことができると同時に、会社の借金(代表者→会社への貸付金は、会社から見た場合には借金となる)を減らすことも可能となります。

また、業況の見通しが暗いという点については、自社だけで解決できる問題ではないので、この点については

・ K社に依存しない新しい販路を開拓する
・ 技術力を生かした自社製品の販売をする

ということを提案しました。

はじめは難色を示していた担当者でしたが

・ B社の技術力は高く、それが評価されている記事やマスコミの取材歴を提出
・ 具体的な販売策と必要な予算、エビデンスとなる資料を作成

をし、計画のの実現可能性が高いことを PR しました。

結果として、B社は、やや減額されたものの600万円の融資を獲得することに成功しました。

新規事業のケース

申込みまでの経緯

開業6年目のC社では、法人向けの会計管理システムなどの販売をしていましたが、経営の低迷が続いていたことから、新たな商品を開発し、それに生き残りをかけていました。

しかし、先行して支出した開発費が予想外に大きかったため、当面の運転資金が不足となり、それを補うため500万円の融資の申込みを日本政策金融公庫に対して行いました。

けれどこれに対し、公庫の担当者からは
● 新商品なので、もう少し実績を見たい
という理由で融資をお断りされました。

お断り理由ついての推察

新事業の場合、日本政策金融公庫に限らず金融機関からは「もうしばらく実績を見たい」というあいまいな理由でお断りがされることがよくあります。

そのような場合、公庫側では「現在の事業計画の中に不審な点がある」、「計画の信憑性が薄い」 と考えていることがほとんどです。

しかし逆に言えばこのようなケースでは、短期間であっても実績を出せば融資が認められることが少なくありません。

さらに、このケースでは、一度目のお断りがあった際、担当者から「短期間であっても実績が確認できれば再検討は可能」という一言をもらっていたため、これを証明する方向で対策をすることとしました。

解決の対策と結果

C社のケースでは、短期間であっても実績を出せれば融資の可能性があるということがわかっていたため、

● 新たに始めるサービスのプロモーションを前倒し、何とか予算を確保する。
● 新サービスの販売ページ(ランディングページ)を作成して、このページにアクセスを誘導するようリスティング広告を集中的に実施し、短期間でも実績を出す。

という対策で約2ヶ月分についての実績を出すことにしました。

その結果、広告費などにより予定していた利益よりは少なくなりましたが、事業計画で計上した売上額目標の80%を達成することができ、最終的にはこれが決め手となって500万円の融資を獲得することができました。 

再度の申込みが可能なケースと難しいケース

再申込みによる融資の獲得が見込みやすいケース

融資がお断りをされた場合でも、次のようなケースではその問題となった箇所の対策をすることにより、再度の申込みによる融資獲得の可能性が見込みやすいといえます。

■ 計画通りの売り上げに疑問があると言う指摘に対して、それを覆すだけの十分なエビデンスを用意できる場合(創業融資の例)
■ 財務内容の悪化が問題となっている場合に、それついて技術的な対策や根拠を示せる場合(赤字企業の例)
■ 実績を見た上で判断をしたいという場合に、短期間でもよいのでその実績を出せる場合(新規事業の例)
■ あらたに担保や保証人の都合がつくこととなった場合
■ 申込人に有利となる大きな制度の改正などがあった場合(例:コロナ対策資金の創設など)
■ その会社の関連会社や従業者が多い場合で、その会社が融資を受けられないため倒産をすると周囲への影響が大きいなどの場合

再申込みによる融資の獲得が難しいケース

一方、次のような理由でのお断りの場合には、 短期間での再申込みによる融資の獲得は難しいといえます。

■ 自己資金の不足を解消できない、その出所を証明できない
■ 事業経験が圧倒的に不足しており、以前に行っていた業務との関連でもそれが説明ができない
■ 家賃、公共料金、各種ローンの支払いについて遅れや未納分がある
■ 税金の納付が条件となっている場合に、その支払いができていない
■ 短期間で解消できない債務超過となっている
■ 個人情報に問題がある
■ 事業の状況が悪い中で、以前に借りた融資の1/3以上の返済が出来ていない
■ 面談での対応が悪い、担当官とケンカをした

まとめ

通常、融資は一度お断りがされると、その後の復活が非常に難しい分野です。

そのため、お断りがされた場合、再度の申込みで融資が獲得できるのは約半年かかるというのも珍しくありません。

しかしすべての場合でそうというわけではなく、可能性は少ないですが、中には上記のようなケースもあったりします。

もし融資がお断りとなった場合でも、

◆ 短期間でも良いから結果を出すことができないか?
◆ 金融検査マニュアルのような政府の指針を活用することができないか?
◆ 制度融資の利用ができないか?

などといった観点から、再度の申込みができないかを検討することが可能です。

とはいえ、実際に融資のお断りがあってからの対策はかなり難しくなりますので、できれば正式な申込をする前に融資の専門家などに見通しについての相談などをしてもらうことをお勧めします。

なお、119番資金調達NETでは、事業計画書の作成の他、融資の再申し込みに関するアイデアや、事前の見通しに関するアドバイスをその方の状況にあわせて行っています。
随時、初回の相談無料でご利用いただけますので、お気軽にご相談ください。

 

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プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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