【スナックの開業資金】融資を確実に引き出す3つのポイント

スナック 融資の出やすさ 日本政策金融公庫

「開業資金が欲しいけれど、スナックでも融資を受けられるのだろうか?」
「どこの金融機関が貸してくれるの?」
「風俗店とはどこが違うの?」

スナック開業で融資をお考えの方の中には、こんなお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか?

とくにスナックの営業は、いわゆる「水商売」の部類に入るため、本当に融資の申し込みができるのかご不安な方も多いと思います。

しかし、スナックはあくまでも飲食店の一つですので、融資を利用することは可能です。
とはいえ、すべての金融機関で融資を受けられるわけではなく、利用できるところが限定されているのでそれに応じた対策が必要となります。

ここでは
「融資が受けられる金融機関」
「開業にかかる経費の内訳」
「スナックの開業融資の攻略ポイント」
についてご説明します。

はじめてのスナックのオープンで融資をご検討の方は、ぜひご参考ください。

スナックの開業と融資について

スナックの開業融資が受けられる金融機関



スナックは、風俗店と同じ業種に見られやすいですが、あくまでも飲食店の一つです。

したがって、融資を受けることは可能です。

しかし、残念ながら、通常の飲食店とまったく同じように融資が受けられるわけではありません。
融資をするかどうかの対応は、金融機関によって異なっています。

日本政策金融公庫の場合
「 原則、O     K
信用保証協会付の融資(「制度融資を含む」)
N G。ただし一部の地域を除く 」

このように日本政策金融公庫ではスナックへの融資がOKな半面、信用保証協会による信用保証は一部地域を除き、行われていません。

また、「制度融資」についても、信用保証協会が制度の一部に組み込まれているため、やはり利用はNGとなってしまいます。
 ※ 都道府県などの行政と金融機関、信用保証協会が一体となって行う中小企業向けの融資制度

では、市中の一般的な金融機関がスナックに対して融資をするか?についてですが、これについても残念ながらNGとなるところが多いようです。

このようにスナックの開業資金では、融資が受けられるのは、ほぼ日本政策金融公庫だけということになります。

スナック開業融資の特徴と攻略のポイント


以上のように、スナックの開業で利用できるのは日本政策金融公庫の融資だけということになりますが、その中でも、はじめて事業をされる方が使える融資の制度が「新規開業・スタートアップ支援資金」です。

以前は「新創業融資制度」という名称でしたが、現在は内容を一部改正した上、新たな制度として利用されています。

「新規開業・スタートアップ支援資金」では、無担保・無保証で最大7,200万円までの借入れが可能となります。

この制度の条件やポイントについては、「新規開業・スタートアップ支援資金」の使い方完全解説!で詳しく説明していますが、この融資の主な特徴は次のとおりとなります。

「新規開業・スタートアップ支援資金」の主な特徴

【特徴1】大きな金額の申込みができる
新たな事業の開始やその後の設備資金・運転資金について最大7,200万円(うち運転資金4,800万円)の申込みをすることができます。

【特徴2】無担保・無保証人融資で利用できる

新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方は、原則として無担保・無保証人で各種融資制度を利用できます。

【特徴3】利率を一律0.65%引下げ

新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方については、原則として、0.65%(雇用の拡大を図る場合は0.9%)の引下げとなります。

【特徴4】長期で返済可能

設備資金は20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金は原則10年以内(うち据置期間5年以内)と長期での返済が可能です。

【特徴5】自己資金なしで申込みが可能
以前の新創業融資制度では、申込みにあたって「1/10以上の自己資金の保有」が必要とされていましたが、本制度では自己資金は不要となりました。

スナックの開業は、「居抜き」の形態であれば、あまり大きな金額はかからないのが普通です。

しかし、新規の開業の場合には多額の資金が必要となりやすいため、「公庫の融資だけで足りるか?」
「減額されて、資金が足りなくなった場合にはどう
するのか?」などについても考えておく必要があります。

また、創業融資では必ず日本政策金融公庫の担当者との面談が行われるため、これもクリアーする必要がありますが、どのような受け答えをすればよいかについては「融資の面談ではこれが聞かれた!15の質問と回答」をご参照ください。

「面談がどのような感じで行われて」、「どんなことを聞かれるのか?」ということがお分かりいただけると思います。

ガールズバーについて

スナックとよく似た営業として「ガールズバー」がありますが、こちらについても基本的な注意点はスナックの場合と同じです。

ガールズバーの注意点

◆ 営業には、保健所の「営業許可」が必要
◆ 深夜営業をする場合には、深夜営業許可も必要
◆ 日本政策金融公庫の融資を利用することは可能
◆ 信用保証協会の保証や制度融資の利用は原則、不可

しかし、スナック営業と比べて、とくに気をつけたいのが「接待行為」です。

ガールズバーでは、スナックよりも女性が特定のお客の接客をすることが多く、これが接待となりやすくなります。単にお酒を作るだけの行為であっても、談笑の時間が長くなるような場合には「接待行為」とみなされることもあります。

ガールズバーで営業をするときには、次の点を守る必要があります。

★ 「カウンターから女性スタッフが出ない」
★ 「相席やデュエットをしない」
★ 「特定のお客と長時間の談笑をしない」

もし、このような行為を予定している場合は、はじめから「風俗営業許可」を取得するべきですが、「風俗営業許可」を取得した場合には、「金融機関の融資が利用できなくなる(日本政策金融公庫を含む)」、「深夜営業ができなくなる」などのデメリットがあるため注意が必要です。

風営法と融資の関係

風営法(現在は「風適法」)による許可が必要となる、いわゆる「風俗営業」の業種については、金融機関の融資だけでなく、信用保証協会の保証も受けることができません。

そのため、風俗営業の許可を取得している場合には、開業は自己資金で行うか、もしくはノンバンクなどを利用することになります。

飲食店の営業を始める方の中には、この点を知らずに「風俗営業の許可を先にとっておけば、いざというときに使える」という気持ちでこれを取得してしまうケースがあります。

しかし、後になってこれを取りやめる場合は、免許の返納だけでなく、会社の目的登記の変更(風俗営業の記載の削除)もしなければならなくなります。

また、経営者がいくつかの事業を営業している場合、その中の一つに風俗営業が入っていると、それが原因で他の事業についても融資が受けづらくなってしまうケースもあります。

なお、開業時には通常の飲食店だったお店が後から風俗営業の許可を取った場合には、既存の融資の返済を求められることはありませんが、それ以降の融資は受けにくくなるため、風俗営業の許可の取得は慎重に行う必要があります。

2店舗目をオープンする場合

スナックを経営されている方が2店舗目を出店する場合も、1店舗目の場合と同じ許認可の手続きが必要となります。また、同一の地区で出店する場合でも、これは変わりません。
ただし、深夜営業の届出については、地区が変わると規制により営業できない場合があります。

なお、注意していただきたいのが「食品衛生責任者の選任」です。

この食品衛生責任者の選任は、店舗ごとに行わなければならないため、はじめの店舗と同じ人間を兼務させることはできません。

そのため2店舗目の従業員の方にあらかじめ講習を受けていただいて、資格を取得する必要があります。

なお、食品衛生責任者の資格や選任については、「飲食店の食品衛生責任者になるには?資格は難しい?」の記事をご参照ください。

          ※ ここから電話できます。

 

スナックの開業にかかる経費はどのくらい?

スナックを開業する場合には、
■ 新規開業
■ 居抜き物件を利用
のいずれかにより、初期経費のかかり方が大きく違ってきます。

ここでは、一般的な例として、それぞれの場合の経費のモデルをご紹介します。

スナック開業(新規・居抜き)のモデルケース

新規開店 居抜き開店
物件取得費用    275万円 ※1 275万円
設備関連費用 1,100万円 ※2 500万円
備品・消耗品                  150万円 100万円
運転資金    405万円 ※3 465万円
合  計              1,930万円            1,340万円

※1 契約費用の内訳

保証金  200万円 ※ 家賃8ヶ月分で計算。
礼金  25万円 ※ 家賃1ヶ月分で計算。
仲介手数料  25万円 ※ 家賃1ヶ月分で計算。
前家賃  25万円 ※ 家賃1ヶ月分で計算。

※2 設備資金の内訳

内装費  600万円 ※ 坪単価40万円×15坪で計算。
什器  250万円
ソファー類  150万円
その他備品  100万円

※3 運転資金の内訳

仕入代  150万円
家賃  75万円 ※ @25万円/月×3ヶ月で計算。
人件費  90万円 ※ @1,200円/h×5h×25日×2人×3ヶ月分で計算。
光熱費他  90万円 ※ @30万円/月×3ヶ月分で計算。

物件取得費用  

店舗を借りるための費用は地域によってかなり異なりますが、保証金は家賃の6~10ヶ月、礼金、仲介手数料、前家賃がそれぞれ1ヶ月分というところが多いようです。

また、融資後すぐに営業を始めるには、開業までに保健所の営業許可を取得しておく必要がありますが、この許可は検査時に電気・水回りといった設備の利用ができることが条件となるため、それまでに内装工事をしておく必要があります。

さらに、工事費をすべて融資後の支払いにしてもらうことはできないでしょうから、工事費の何割かは着手時に支払う必要があります。

このように考えると融資前であっても、確実に物件を確保するためには、最低でも
「約9~11月分の契約時資金+工事着手金(ケースによってはそれ以上)」の費用を賄えるだけの自己資金が必要
ということになります。

設備関連費

設備関連費としては、主に内装工事費、外壁塗装費、冷暖房機器などがあげられます。

一般的な内外装費としては30~50万円/坪が相場ですが、繁華街での開業や豪華な内装にした場合には、この倍くらいのコストがかかることもあります。

なお、上記の新規開店のケースでは、設備等を撤去した状態からの工事を想定していますが、スケルトン状態からの開業の場合には、さらに設計費がかかるうえに工事費用も割高となります。

備品・消耗品費

什器、イス、テーブル、食器、照明、カラオケの音響設備などがこれに該当します。
これらは新品で購入するとかなりの額となりますが、中古販売店を利用することにより、70%~50%程度にコストを抑えることができます。

運転資金

家賃、人件費、仕入代、水道光熱費、その他消耗品がこれに含まれます。

運転資金は多く借りられればその分安定した経営ができますが、スナックのような現金商売で融資が認めてもらいやすいのは約3~4ヶ月の運転資金というのが一般的です。

運転資金の主な内訳としては、以下のものがあります。
・仕入れ代 ・家賃 ・水道光熱費 ・人件費 ・宣伝広告費 ・その他

なお、運転資金で見落としがちなのが「クレジットの利用料」です。その料率はカード会社によって変わりますが、4~7%というのが一般的です。この利用料はお店の負担となるため、クレジットの利用が多いところでは、この経費についても見込んでおく必要があります。

 

スナック開業時のスケジュール

以下は、スナックを開業する場合のスケジュールの一例となります。

 開店までのスケジュール

➀ 物件の選定、デザインの決定
➁ 店舗の賃貸借契約の締結
③ 内装工事の着手
④ 営業許可の申請
➄ 備品、什器等の購入
⑥ 人材の募集、採用
➆ 営業許可の取得
⑧ 内装等の工事完了
⑨ 深夜酒類営業の届出
⑩ 仕入れ準備
⑪ オープン

なお、ここで注意しなければならないのが、各作業の順番です。

上記の作業については決まった手順があるため、手続きの順序をむやみに入れ替えたり、間違ってしまうとオープンに間に合わなくなってしまう可能性があります。

したがって、計画を立てるときは各専門家(設計事務所、工事業者、行政書士など)の意見を聞いてプランを立てるようにしてください。

その他の注意点

■ 工事に着手できるのは賃貸契約の締結後

テナントを借りて飲食店の営業する場合、賃貸借の契約の仕方には次の2つのパターンがあります。

➀ 先に手付等を支払って、賃貸借契約の締結は融資が出るまで待ってもらう。
➁ 先に賃貸借の契約をして、諸費用を支払ってから融資を申込む。

➀のパターンの場合には、融資が出なかった場合のリスクを最小限に抑えられるというメリットがあります。しかしその反面、大家の了解が取りにくいというのが難点です。

➁のパターンの場合には、テナントを借りられるのは確実となりますが、融資が出なかった場合にはかかった費用がロスになるというリスクがあります。

とくに②のパターンでは、万が一の場合のロスが大きいため、できれば
● 手付金だけで融資が出るまで、物件を押さえておくことはできないか
● もし、それが難しい場合、融資が出るまでの家賃を支払うことを条件に、物件を押さえてもらうことはできないか
を大家さんに相談することをおすすめします。

■ 営業許可の申請は、必要な工事の完了後

保健所の営業許可は、書類の提出だけでなく、店舗の検査も行われます。この検査は、店舗の構造や設備が定められた基準に適合しているかを確認するために行われます。

検査のくわしい基準については 「飲食店の営業許可を一発で取る!申請・書き方マニュアル」の記事を参照いただければと思いますが、いずれにせよ内装工事が完了してからでないと検査ができないということに注意してください。

■ 深夜営業の届出は、営業許可の取得後

午前0:00を超えて営業する場合には警察へ「深夜営業に関する届出」(「深夜酒類提供営業開始の届出」)をしなければなりません。

しかし、この申請をする際には、「営業許可証」のコピーを添付する決まりとなっています。

そのため、この2つの手続きは
「保健所への営業許可の申請」
      ↓
「警察への深夜酒類営業開始の届出」
の順番で行う必要があります。

この順番を間違えると深夜営業の届出が受け付けられませんので、注意してください。

 

スナックの開業融資の確率を上げるには

スナックの開業融資の確率を上げるには、「事業計画書でどのような店舗経営をするかをしっかり伝える」ことが重要となります。
営業に必要となる許可や届出については当然ですが、それ以外にも「どのような計画やコンセプトで売上げを立てていくのか?」、「他とどのような差別化ができているか?」が明確になっていなければなりません

たとえば、以下のようなオリジナルのアイデアを取り入れた計画の方が、金融機関の理解を得やすいといえます。

アイデア例 1)
売上対策として、昼間の時間は喫茶店として営業し、店舗の空き時間をなくす
アイデア例 2)
アニメなどを中心としたコンセプトバーの要素を取り入れ、インバウンド需要を狙う
アイデア例 3)
深夜の利用層をターゲットにして、営業時間を23:00~5:00までとする
また、事業計画書の売上げの見込みを信じてもらうには何らかの工夫が必要となりますが、この点については「スナック資金融資の事業計画書で最も大切なこと」の記事で、オリジナルの手法を一部公開しています。
なお、具体的な事業計画書の書き方全般については、「事業計画書の成功実例を完全公開」の記事で詳しく解説しているので参照ください。

まとめ

【その1】
スナックの開業資金の融資は、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」をメインに考える。
【その2】
物件の取得費用は家賃の8〜10ケ月分、内外装費は30~50万円/坪を目安にする。開業後の運転資金は約3~4ヶ月分程度が出やすいボリューム。
開店までのスケジュールは、専門家も入れて協議すべし。
【その3】
事業計画書には、資金的な計画だけでなく、独自のアイデアがあると融資が通りやすくなる。

スナックの開業資金はポイントを押さえて正しく申請すれば、成功する可能性の高い部類の融資であるといえます。しかし、スケジュールや資金計画など気にしなければならないことも多く、ライバル店との差別化をどう図るのかという点も重要なポイントとなります。

したがって、「物件が見つかったから」などだけで安易に開業するのではなく、長く続けていけるだけのアイデアやコンセプトをじっくりと考えましょう。

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プロフィール
融資コンサル
引地 修一

119番資金調達NETの代表引地です。
創業者・中小企業経営者の方向けに、 融資の申込みや事業計画書の作成計画・経営の改善などのサポートをしています。これらに関するご質問であればたぶん90%くらいの確率で、回答できると思いますので、お気軽にご相談ください。

【主な経歴】
・2005年Ichigo(一期)行政書士事務所を開設。
・2008 「確実に公的創業融資を引き出す本」を出版。※6刷増刷中
・2008 ドリームゲート「資金調達部門」最優秀アドバイザーを受賞
・2011 「銀行格付けアップ術」出版
・2014 「飲食開業のための公的融資獲得完全マニュアル」
・2021現在、累計相談者数2,000人を突破。

【持っている資格】
行政書士、宅地建物取引主任、事業再生アドバイザー、品川区武蔵小山創業支援センター公認アドバイザー

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